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エンターテインメント産業とニューメディア産業:メタバース、コロナ禍におけるデジタル化、次なる技術革命…… 業界エキスパート TatiannaTacca と John Zozzaro との座談会

エンターテインメント産業とニューメディア産業:メタバース、コロナ禍におけるデジタル化、次なる技術革命…… 業界エキスパート TatiannaTacca と John Zozzaro との座談会

Global Open Innovation Network は、Choose Paris Region が企画運営しているオープンイノベーション事業です。技術革新や破壊力のある新たなテクノロジーを先取りし、イノベーターたちと関りを持ちたいと考えている一流企業を募集しています。TechMeeting は、モビリティ、クリーンテック、コネクテッドヘルス、スマートビルディング、持続可能な建設産業などのテーマに取り組む事業です。エンターテインメントとニューメディアを取り扱うこの章では、業界のエキスパートお二人にお集まりいただきました。ゲームや e スポーツの世界に詳しい個人コンサルタント兼アドバイザー Tatiana Tacca 氏と、エンターテインメント産業とメディア産業の専門家で MediaTech Ventures の創立者でもある John Zozzaro 氏です。

 

Florian – Choose Paris Region: かつて、メディア産業やエンターテインメント産業の企業は、コア商品に集中していました。マーベルは漫画の出版社、ESPN はスポーツのテレビ局、マテルは玩具メーカーでした。 近年では、これらの企業はいずれも、おもちゃ、動画、ゲームといった自社のコア商品の周辺に、ひとつの世界を作り出す傾向にあります。たとえば「スターウォーズ拡張宇宙」とか「マーベル宇宙」といった具合です。
なら2021年のエンターテインメント企業はどうなるでしょうか?


John Zozzaro: 現在に至る歩みをたどることが、この構想の本来の主旨ですから、その質問にお答えするには、メディアの進化を的確に評価することが重要だと思います。メディアといえば、その始まりは、業種としては非常に明確ですが、当時はメディアとして定義されていませんでした。ニュース、新聞、テレビなどのことです。私たちが最終的に目にしたのは、マーケティング、広告、出版、ラジオや映画などといったメディア産業で、これらすべてを非常に大きなかたちで統合したのがインターネットです。それだけでなく、インターネットの登場は、さらにいくつかのことを強要することになりました。
1/ 古く時代遅れになった出版やマーケティングの慣行を近代化し、デジタル時代のインフラや技術を取り入れ、21世紀に向けて自社をブランド化することを余儀なくされました。
2/ 仮想現実(VR)、拡張現実(AR)、その他の新たな配信方法により、ビデオゲームを生み出しました。新たな配信方法は、年ごとに指数関数的に成長し続けています。

今日では、Disney や Warner のようなコングロマリット(複合企業)は、複数のビジネスユニットを抱えており、さまざまな業界で製品やコンテンツを作成できるような組織設計になっています。すべてのビジネスユニットが相互に関連しあっているため、単純な音楽会社やゲーム会社に戻ることはもはや不可能です。技術企業であり、金融企業であり、メディア企業でもありながら、エンターテインメントの将来と言えるコミュニティの要素も備えているため、競合他社を恐れることなく市場を管理しリードすることができます。

「技術企業であり、金融企業であり、メディア企業でもありながら、エンターテインメントの将来と言えるコミュニティの要素も備えている」
- John Zozzaro


Tatianna Tacca: ゲーム産業の視点を付け加えるなら、個々のファンダム、またファンダムを中心に構築された個々のコミュニティに重点を置く必要があります。今日では、人びとの関心は非常に多様化しています。このため、大衆文化の世界はメディアやタッチポイントを多様化できる契機にあると言えます。ゲームやアニメーション映画の業界は、この点を認識し始めています。たとえば League of Legends や DOTA は、Netflix 向けにドラマを制作していますが、以前では考えられないことでした。こうした大手ゲーム会社は、今日ではマルチタッチポイントを意識していて、特に音楽に焦点を当てています。たとえば League of Legends は、自社のゲームとコラボした複数のバンドを売り出しています。

 

複数の小宇宙がメタバースを生み出す

Florian – Choose Paris Region: 最近見られる現象として、メタバース空間で数多くの企業が生まれています。メタバースとは、仮想空間を舞台としてコラボレーションができる世界のことです。ユーザーはアバターの姿でその世界に入り、活動して、周囲の環境や他のユーザーとつながったり対話したりすることができます。
この新しいトレンドについてどう思いますか?

John Zozzaro: 多くの人びとが理解すべきこととして、複数の世界がデジタルで交錯するというこの発想はすでに長らく存在したもので、オンラインで金を購入すれば、その取引はすでにこのデジタル世界の一部を構成しているわけです。テクノロジーが進化を続け、接続性がますます向上するにつれ、複数の世界を統合する機会はますます増えることになります。一例として、ゲーム「Fortnite」での音楽パフォーマンスが、成功を収めています。というのも、技術的に言って、以前には不可能だったサービスだからです。周辺にコミュニティを抱える技術企業、金融企業、メディア企業について言えば、これらの企業のメタバースでは、まさにこれと同じようなことが行われており、今日では非常にうまくいっています。このことは、仮想現実(VR)や拡張現実(AR)の拡張とあいまって、近い将来、さまざまなかたちで、これらのメタバースに影響を与えるようになるでしょう。

Tatianna Tacca: こうしたオープンスペース型のゲームは、複数のコミュニティに集まってもらえるよう、複数のサーバーを相手に相互に創造的な作用を及ぼすための完全な機会を提供しており、すでに非常に成功しています。Roblox、Minecraft、Fortnite は、いろいろなかたちで素晴らしい仕事をしてきました。というのも、多くの人びとを引き込み、自分だけのゲーム世界やエクスペリエンスを創造する機会を与えたからです。これらの企業は、現在、規模を調整できる方法で新たな客層を掘り起こすことができる方法を模索しています。これは、ゲーム内のクリエイティブモードといったもので、いまや一般的な方法になりつつあります。
メタバースに関わる、このアイデアの素晴らしいところは、バーチャル世界の遊び場として、とても奥が深いところです。これは非常に大きな力となりうるアイデアです。ゲームはすでに、社交の場、創造的な仕事を共にする場、志を同じくする人びとを結びつける場となっているため、このコンセプトは今後も成長を続けるでしょう。

「ゲームは、社交の場、創造的な仕事を共にする場、志を同じくする人びとを結びつける場となっている」
- Tatianna Tacca


Florian – Choose Paris Region: 制作会社や動画コンテンツクリエイターは、こうしたメタバースと、どのように向かい合っていくべきでしょうか?

Tatianna: メタバースは、いまのところまだ定義が曖昧なものであるため、よりよい識見が得られるのは、まだ少し先のことになるでしょう。このため目下の解答としては、メタバースで生まれているものをパッケージ化し、一定のコンテンツシリーズや動画にまとめることができます。そうすることで、メタバースとは何か、どのような姿をしているかを、実際に知らしめ、現実世界とつなぐことができます。


Florian – Choose Paris Region: 韓国では、メタバース企業が寄り集まり、プロジェクトアライアンス方式で、ひとつのユビキタスなメタバースを形成しています。
今後数年間のうちに米国でも独自のメタバースが形成され、今日のインターネットと同じような状況になりうると思いますか?

John Zozzaro: 技術というものは、いつの世も、周囲の環境に適応する能力によって繁栄してきました。この適応能力は、接続性によって得られるかもしれませんし、API 統合などによって得られるかもしません。いずれにせよ、こうしたコミュニティが寄り集まって、さらに実質的なものを形成することは理に適っています。というのも、そうすることで互いにより多くの付加価値を与えあうことになるからです。これからの数年間で、こうした企業の多くが寄り集まってゆくのを見ることになるでしょう。

 

コロナ禍のあいだに、私たちの世界はデジタル化が進みました。今後はどうでしょうか?

Florian – Choose Paris Region: 業界のプレゼンテーションを見れば、ここ数年のあいだにデジタル化が進展しており、コロナ禍がその傾向を大幅に加速化させていることが分かります。身体活動をオンラインで遠隔で行ったり、どうぶつの森で卒業式を行ったり、Twitch で政治集会を開いたり、Fortnite でコンサートを催したりするようになりました。コロナ禍でどのような変化が起こりましたか?こうしたデジタルな活動はコロナ後も残るでしょうか?

Tatianna Tacca: コロナ禍をきっかけにして、Twitter 上でのゲームに関する会話が、89%も増加しました。月ごと、四半期ごと、年ごとに見ても、仮想世界のゲーム関連の売り上げは記録的な伸びを示しています。Twitch や Youtube などのプラットフォームによるライブストリーミングも87%増加しています。またゲームの利用、ゲームに関する動画の視聴、ゲームに関するネット上での議論が、右肩上がりに増加していることも確認されています。このことは、ゲームのメーカーが、そのプラットフォームで仮想アクティベーションを増やすきっかけになります。カスタムコンテンツを作成するインフルエンサーの力を借りることで、Twitch や Youtube では、スポンサー企業のライブストリームも79%増加しています。
企業にとっては、コアな需要がライブストリーミングとは直接関係ない場合でも、ネット配信が持つ非常に大きな規模と価値を考えれば、間違いなく宣伝の一環になります。こうした事情により、企業は、主業にもプラスの影響を受けることになり、ゲーム、ライブストリーミング、e スポーツとも関係を築いてゆくことになります。非常に革新的なことが起こりました。たとえばバーバリーは、ロンドンでのファッションショーをリアルでは開けなかったため、初めて Twitch のライブストリーミングを使って開催しました。またポスト・マローンは、ライブストリーミングを使ってアニメーションコンサートを開き、ポケモンとコラボしました。

John Zozzaro: メディア産業が成功を収め、繁栄し続けている理由は、ある意味で肉食的な業界の体質とも大きな関係があるでしょう。米国連邦政府の立場からすれば、メディアや制作会社といった定義は、すでに時代遅れのものとなっています。ここに込められている含意としては、プライベートエクイティや民間企業にも影響が及んでいるということです。出版業、広告業、ジャーナリズム、ゲーム会社などをメディアとして捉えるなら、あるいはまた、ベンチャーキャピタルや投資の見地に立てば、メディアに含まれる範囲は広くなり、メディアは経済状況に関わりなく常に一定なものとなります。

「メディアは経済状況に関わりなく常に一定なもの」
- John Zozzaro


エンターテインメント産業は、テクノロジーを駆使してデジタルコンテンツを制作することができなかったため、音楽のライブパフォーマンスの観点から見て、コロナ禍で完全に衰退しつつあることが分かっています。一方で、膨大な利用者が一挙に獲得される現象も見られています。ジョー・ローガンは、Spotify、podcasts、Netflix から1億ドルを受け取り、ビデオゲームは指数関数的に増加しています。このことはメディアに投資するメリットがあることを示しています。経済危機の有無、コロナ禍の有無に関わりなく、あるメディアが指数関数的に繁栄を続けていれば、他のメディアのなかには、凋落するものも現れるということなのです。

では、これから数年間で成功を収めそうな革新的テクノロジーとは、どんなものでしょうか?

Florian – Choose Paris Region: エンターテインメント産業やニューメディア産業で、依然として毎年、最も高い成長率を誇っているのは、仮想現実(VR)テクノロジーです。仮想現実(VR)という言葉を聞くようになったのは2012年からですが、VR ヘッドセットや VR アプリを開発している企業は、いまでもたくさんあります。それでも VR はテレビやスマートフォンのように全世帯に普及しているわけではありません。
その理由は何でしょうか?また、ゲームや e スポーツの世界における次の大きな技術革新は何でしょうか?

 

Tatianna Tacca: 今のところまだ VR には多くの障壁があり、その状況は以前とあまり変わっていません。VR 技術はまだまだ高価で、VR を絡めたゲームやエクスペリエンスもまだあまり多くはありません。また操作方法も、携帯、コンソール(ゲーム機)、パソコンほど簡単ではありません。こうした状況が見られるのは、VR はまだ大規模に導入されるだけのスケーリング段階に達していないということですが、とりわけ e スポーツの世界では、すでに驚異的な機会を得ています。たとえば League of Legends や Call of Duty といったゲームは、非常にアクセスしやすく、だれでもネット上で見つけ出し、プレイすることができます。VR に関しては、特定のゲームではまだ少し難しいです。それでも、こころ躍らされるような現象がたくさん見られます。技術が急速に進歩しているため、大規模な VR 革命がすぐにも訪れるかもしれません。
ゲームと e スポーツの世界では、自分だけの仮想空間やエクスペリエンスを生成し発展させる機能に関係して、技術革新が進んでいます。Fortnite では、自分だけのマップを作成できるようになりましたし、GTA では新しいチャレンジやエクスペリエンスを作ることができます。これはゲームの世界を他のエクスペリエンスに拡大する方法であり、音楽や、その他のあらゆる種類のエンターテインメントの場で、ユーザーと再接続する方法なのです。ライブストリーミングで活用されている双方向性も劇的に成長しています。たとえば、予測、投票システム、視聴者エクスペリエンスを拡張するために Twitch が開発したチャットに付随する新しい要素などです。
忘れがちですが、他人に囲まれた環境でもより快適に感じられるようにするための、新しい安心イノベーションもたくさんみられます。

John Zozzaro: メディアが現在世界で果たしている役割を理解することが重要です。Facebook や Twitter などの企業は、プラットフォームの影響を理解し、プラットフォームがどのようにして世界に功罪をもたらしうるか理解する必要があります。つまり問題の本質は、どのように私たちの現在社会に適応させるかということです。うまくいけば、新しい Web 3.0アプリケーションで新しいパラダイムが生まれ、ブロックチェーンが引き続き適応され、メディア全体の透明性と統合がさらに進化することになるでしょう。たとえば、SPACS(特別買収目的会社)に注目すれば、通常は、年平均5社〜10社なのに、昨年は100社を超えています。こうした SPACS で、大規模なメディア統合がみられ、その取引額は公開されているものだけでも数十億ドルに達します。膨大な額の投資について、リスクが軽減されることになります。
それ以外の分野では、もうすぐ実用化される見込みの 5G が再び、メディアを作り変え、一般向けにメディアが配信されるあり方も作り変えることになるでしょう。これにより、さらに多くの人びとがインターネットにアクセスできるようになります。

「 5G が再び、メディアを作り変え、一般向けにメディアが配信されるあり方も作り変える」
- John Zozzaro


Florian – Choose Paris Region: 企業やエンターテインメントエコシステムを持続的に利用する長さは、人によって異なります。優先順位が変わり、利害関係者がこうしたアドバイザーや開発ピボットに対して機敏に対応できるようになれば、ベンチャー戦略の新しい価値、利点、持続可能性に、どのような影響があるでしょうか?

John Zozzaro: 世界を運営するコングロマリット(複合企業)、私たちが消費するメディアは、いずれも、わずか8社が所有するところです。この点を理解することが重要です。オーナーシップと子会社の見地からは、コングロマリット(複合企業)やポートフォリオの多様化が未来の姿であり、投資する側からすれば、パイの分配よりも意味のあることに関与するほうが、はるかに容易である、ということになります。音楽分野のトレンドとして、アーティストたちは自分のことを企業として捉え始めており、ひとつの子会社には自分の肖像権を管理させ、別の子会社にマスターを管理させ、また別の子会社にライセンスビジネスを管理させるようになっています。投資する側は、自分の好みで投資対象を選ぶことができます。たとえば、BMG は年間10億ドル以上をライセンスビジネスに投資しているため、ライセンスアプリに投資するかもしれませんし、ソニーは、同じアーティストの肖像権に関心を持ち、投資するかもしれません。つまるところ、関係者全員が同じものを宣伝し、全員が勝者となります。全員がパイの一部を得ることになるのです。
そしてそれは、価値を掘り当てること、テクノロジー、またテクノロジーの評価方法によって、効果的になっていくでしょう。しかし投資する側は、そうした現実を受け入れる準備が長い間できておらず、今もできていません。そのためこうした細分化を招き、細分化のあり方にまで影響を与えています。時価総額1兆ドル近くで取引きされているトップ5のメディア企業を見てみれば、これらの企業の構造や機能に、いくつかの類似点があることに、すぐ気がつきます。

 

Tatiana Tacca は、ゲーム、e スポーツ、アニメ、ライブストリーミング、およびオタク文化全般をカバーする個人コンサルタント兼アドバイザーで、この分野のソートリーダーとされています。 Tatiana は、ゲーム産業のマーケテイングに10年のキャリアを持ち、有名企業、ゲーム会社、エンターテインメント会社のコンサルタントを務めています。トレンドやホワイトスペースについて提言を行い、ゲームの分野で最も価値の高いビジネス機会を最適化できるクリエイティブな戦略的パートナーシップ、スポンサーシップ、マーケティングイニシアチブを提唱しています。

John Zozzaro は、シリアルアントレプレナー(連続起業家)、コミュニティビルダー、モチベーショナルスピーカー、コンサルタント、メンター、アドバイザーで、教員でもあります。John は MediaTech Ventures を経営しており、ソフトウェアや専門的なサービスを提供する会社のポートフォリオ管理も行っています。また、メディア産業やエンターテインメント産業での経験が豊富で、その専門分野には、企業構造、マーケティング販売インフラ、ワークフロー、分析やデジタルの最適化が含まれます。

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Stéphane Martinet

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